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Chapter39 『ギャオス来襲』
「先ほど衛星電話をお借りしてモスル大学のザハド教授にお聞きしたんですが、カルデア神話では、マンティコアの王ヤイゲル・セラビムは白き魂を抜かれ、悪魔の笛で封印されたと伝えられているそうです。天空に赤い月が現れたとしても悪魔の笛の音が絶えない限り、ヤイゲル・セラビムが復活することはないと…ウェスター島のジャイガー伝説でも不思議なことに同じような伝承があります。国連軍のレポートによると、超新星爆発が起こったときニネヴェの葬祭殿の中央にあった石柱がテロリストによって爆破され、その直後にジャイガーが出現したと報告されていました。その石柱は地元では悪魔の笛と呼ばれ、カムシン(南の熱風)が吹くと独特の音色を奏でたそうです。その音をサンプリングしたディスクがモスル大学にあるそうなので、教授にデータを送っていただきました。真弓の専門分野ですが、動物の中にはある一定の周波数の音に敏感な習性を持つ種がいることが知られています。この音色を増幅してジャイガーに向ければ、あるいは言い伝えどおり戦闘能力を奪うことができるかもしれません」
斎藤は千里の話を閣僚に進言したが、棚橋防衛大臣に一蹴された。
「ばかばかしい。我々は学者の戯言に耳を傾ける余裕などないんだよ。すぐに決着をつけるから、君たちは黙ってモニターを見ていたまえ」
棚橋大臣の横暴な言いように、立場上千里たちは黙って従うしかない。
真弓は千里が大臣をポカリとやりはしないかそれだけが心配だった。

   その頃、首都防衛守備隊、第1師団を主力とする陸自主力部隊は東京ゲートブリッジから中央埋立地に集結しつつあった。海上には第1,第2護衛艦隊の主力艦4隻が展開している。棚橋大臣は総攻撃によっていっきに2体を殲滅することができると、なんら根拠のない自信に満ちている。
  ガメラとジャイガーの凄惨な闘争は、午前3時を過ぎる頃には中央埋立地を望む青海地区の南端にまで到達していた。さすがに両者とも相当体力の消耗が著しく、動きがかなり緩慢になっている。ガメラは流血で全身青緑色に染まり、顔面は原型をとどめないほど爛れ一部頭骨が露出している。ジャイガーは左の翼の付け根を食いちぎられ展開することができずだらりと力なく垂れ下がり、体毛はガメラの体液と自らの強酸に犯されどす黒く変色し、美しかった縞模様と乳白色の体はほとんど確認することができないほど劣化している。
それでもなお旺盛な闘争本能で、2頭とも敵を完全に地上から抹殺するまで闘いをやめる気配を見せない。

 水路を挟んで青海地区を望む対岸の中央埋立地と大井ふ頭にはまるで串のように規則正しく重火器が整列している。東京湾沿岸に展開した護衛艦群はすでに臨戦態勢で目標にミサイルをロックしていた。
「全部隊に通達 04:00 全火力をもって目標を掃討すべく総攻撃を敢行する」
 
明け方の臨海副都心の空は超新星の血のように赤い光と、燃えさかるオレンジ色の炎のコントラストで、一面がまるで得体の知れない生物のように不気味に蠢いて見える。
午前4時、まさに総攻撃が開始されようとした直前、なんの前触れもなく攻撃部隊を管制するすべての電子機器がブラックアウトした。
危機管理センターに戦慄が走る。オペレーターの緊張した声が室内に響く。
「偵察部隊より報告!東京湾上空にワームホール発生の兆候あり!」

   中央埋立地南東の空に、低く垂れ込め青白い閃光を発しながら渦巻く巨大な暗雲が出現した。渦巻きは急速に発達している。ぽっかりと口を開けた暗黒の中心部から放たれた黄白色の光線の束が、2体の巨獣に照準を合わせ沖合に展開している護衛艦隊を直上から捉える。“やくも”と”たかちほ”は艦体をまっぷたつに切断され、誘爆の轟音に包まれ数秒のうちに海中に飲み込まれた。
”ふたかみ”と”いざなみ”は闇の中から舞い降りてきた邪悪な黒い影の群れにあっという間に覆われてしまう。
「ギャオス出現!総数約ふた百!“やくも”“たかちほ”消失。”ふたかみ”“いざなみ”戦闘不能」
ブラックアウトしているほんの数分が永遠の時間のように感じられる。その間まったく無抵抗な護衛艦隊はギャオスの思いのままに蹂躙されている。

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「管制機能回復しました!」
「百里の302及び305飛行隊に戦闘支援を要請!」
「中
央埋立地に展開中の全部隊は目標をギャオスに変更。ただちに攻撃を開始せよ」

 思わぬギャオスの急襲に指揮系統は混乱し、攻撃態勢を整える間もなく陸自主力部隊も次々と上空から襲ってくるギャオスの大軍の犠牲となっていった。
  大井ふ頭に展開した別部隊も同胞に向けて発砲することができず、ただ呆然と状況を見つめているしかなかった。
「横田の米軍にも支援要請しろ!これは戦争だ!」
棚橋大臣の興奮した甲高い絶叫がセンター内に吐き散らかされる。 
山岸総理はただ黙ってモニターを食い入るように見つめていた。

   ガメラとジャイガーにもまるで獲物を狙うピラニアのように数十体のギャオスが次々と群がってきた。みんな体長12mほどの小さな個体であったが、辺り構わずどう猛に食らいついてくる。ガメラは食いついたギャオスを引きはがし地面にたたきつけ踏みつぶす。ジャイガーは鋭い牙とツメで引き裂き、長い尾でなぎ払う。
   みるみるうちに暁ふ頭公園付近はギャオスの遺骸が折り重なり、体液と
肉塊で見るも凄惨な状況となった。

   地上の重火器部隊はギャオスの襲撃で、数分の後にほぼ壊滅状態に陥った。護衛艦隊もほとんど戦闘能力を失い、艦内では火災が発生し乗組員が海上へ脱出しているのがふ頭から目撃できた。その上空には黒い塊のようなギャオスの群れが旋回し、まるで海鳥が小魚を狙うように乗組員を次々と捕食している。

   ガメラは対岸に向かって連続でプラズマ火球を発射する。戦車群の骸は大半は跡形も無く吹き飛ばされ、残った車両も次々と誘爆を起こしギャオスともども紅蓮の炎に包まれた。
 ジャイガーの毒針は空中で正確にギャオスを捉える。まるで隕石の落下のように数体のギャオスが錐もみ状態で海上に墜落する。しかしあまりにも大群のギャオスに対して際限の無い無謀な闘いのように思われた。

   そのとき空自百里基地から発進したF-15と米軍のFA-18が、ギャオスの群れに向かって攻撃を開始する。東京湾上空で壮絶なドッグファイトの火ぶたが切って落とされた。
大井の残存地上軍からも短SAM誘導弾が連続発射される。戦車隊もようやく砲撃を開始した。被弾した複数のギャオスが火だるまとなって次々と海上に落下する。
  数で圧倒的に有利なギャオスの反撃で戦闘機群も徐々に損耗していった。
  小松の303,306、築城の304各飛行隊のF-15も空中戦に参加する。
  棚橋大臣の嘆きどおり、早朝の東京港上空は四つ巴の壮絶な戦場に変貌した。

   同時刻、豊洲にあるビルのヘリポートに、赤く染まった南の空を見つめながら白い仮面の女がたたずんでいる。
背後からライフルを構えた長身の男が叫んだ。
「井氷鹿!これがおまえの望む結末か!」

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先日ニューガメラのトレイラー見て思わずギャオスの大群を出現させてしまいました
まさしくあの映像のオマージュデッス
アダルトムードでかなりグロい状況を想像してくださいませ~
「進撃の巨人」のイメージかなぁ~デヘヘ