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Chapter48 『1945』
「あんたらはいったい何者なんだ。あんな化物たちを東京に呼び寄せていったいなにを企んでいる。俺にも判るように説明しろ!」
 米森は苦々しい表情で言葉を吐き捨てた。辰興は米森の問いには無言で、部屋の隅々にある蝋燭に火をともすと、先に座っていた木製の椅子にゆっくりと腰をおろした。

「君たちは…いや少なくとも高来准教授は我々の存在についてうすうす察しがついていることだろう。君も高来さんから話を聞いているのではないのかね」
「あんたたちがシッポのある妖怪の末裔だと言っていたが、そんな話は信じられない」
「そうか…それは心外だが当たらずとも遠からずといったところかな。確かに尾の生えた有尾人ではないが、遠い昔土蜘蛛と呼ばれた異端者であったことは間違いない。それに末裔ではなく私自信がその時代に存在していたんだ。いや今でも存在しているというべきか。我々にとって時間というものは対して価値を持たない。完全にコントロールできるものだからね。その気になれば君たちの世界のどの時間にも存在することができるのだよ。さっきも言ったが時間という概念は、君たちの世界を形作っている重要な要素かもしれないが、我々にとってはほとんど意味を持たないものだよ」
   辰興はグラスにワインを注ぐとまたおもむろに立ち上がった。ゆらゆらと揺れる蝋燭の炎に無表情な横顔が照らされている。

「そもそも我々にとって時の流れは君たちの世界のように不変的なものではない。我々の世界と君たちの世界の時間という概念はまったく違うものだと言っても過言ではないだろう。古来より君たちの先人が我々に畏怖の眼を向け排除したがるのは、我々の存在自体が理解できず恐れているからじゃないかね」
「なんのことを言ってるのか分からない!だいいちあなたが朝倉辰興だという証拠なんてないじゃないか。時間を自由に行き来できるなんて話僕には誇大妄想としか思えない」 
  米森は辰興に強く反論した。淺黄はただ黙ってふたりの会話を聞いている。

「今日がいつだか分かるかね米森くん、想像もできないだろうが1945年1月1日…実に象徴的な年の幕開けだろう。この夏、君たちの国はかつて経験したこと無い大量殺戮の洗礼を受け、屈辱的な敗北を迎える。私は自由に君たちの歴史を改ざんすることができるが、そんなことをしても対して意味を持たない。君たちがここに来る前の時間にすべてが終わってしまうからね」
「それより、君たちはこれから私の起こす行動に興味があるんじゃないのかね。夜が明けると私は佐世保へ出立する。私が南太平洋の海底でいったいなにをするのか。そうしてどうやって日本へ帰ってくるのか興味はつきないだろう…まあ帰ってきた方法についてはすでに君たちも体験ずみだが」
 すでにあたりは漆黒の闇に包まれている。昭和20年の冬の闇は、自分たちの時間のそれより濃厚で、全身にまとわりついてくるように感じた。

「カール・フォン・ヴァイストールについてはもうよくご存じだろう。彼は…いや私はアーネンエルベを使って長年世界中至る所に伝わる神話・伝承を研究し、ようやく探し求めていたもののありかを見つけることができた。そしてこれからそれを、南太平洋の海底深くに隠されている客人を招き入れる鍵を受け取りに行く。我々と君たちの境界を取り払い世界をひとつにするために…そのためのゲートを開ける鍵だ。これも高来さんから聞いていたんじゃないのかね。そもそもいま君たちを脅かしている四柱の戦神はゲートの番人だ。そして世界をリセットする者…しかし君たちがマナと呼ぶ者が我々を裏切り1体だけその使命を書き換えた。それが黒龍亀駕瞑羅、そしてあろうことかゲートを開く鍵を我々から遠ざけるため深い海に沈めたんだよ。君たちの始祖が乗ってきた舟とともに…」
   達興の言葉は、米森にはにわかに理解できない古のお伽話のように思えた。

「君たちの始祖というのはちょっとニュアンスが違うかもしれないね。君たちの始祖が我々だといった方が正しいかもしれない。そもそも君たちを創造したのが我々なのだよ。我々が君たちが神あるいは魂と呼ぶ者そのものなんだ。君たちは我々が創造した器にすぎない。しかしその器が事もあろうか自我を持ち反乱を企て創造主を幽界へ追放した…愚かなことに使役するために造られた者たちに裏切られたのだよ。かろうじて現世に残った少数の者は異端者として迫害され、闇に紛れて細々と生きてきた。しかし長い年月を経て再び我が同胞が現世に復活する時がきたのだ。そのためには世界中に増殖した君たち人類を駆除する必要がある。器は必要数以上は不要だからね。そのためにギャオスが覚醒したのだよ。しかしまたしても黒龍亀を使って我々の計画を邪魔するものが現れた。それが君だ草薙淺黄君、いやマナと呼んだほうがいいかな。それともヒミコといったほうが正しいか…」
蝋燭の炎が風もないのに大きく揺らいだ……

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またまたひらめいてちょっと設定を変えました
そのため以前の文章もつじつまがあうよういじってあります
少々理屈っぽくなっちゃいますけど
あともう少し辰興氏に説明してもらおうと思いマッス

闘いの結末も気になるところではありますが
今しばらくお付き合いくださいませ~