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Chapter53 『守人の血脈』
 市ヶ谷のヘリポートでは、真弓から連絡を受けた米森と淺黄が千里たちの到着を待っていた。駆け寄った米森は黙って真弓を抱きしめる。今度は千里が所在なげに視線を貴幸に向けた。

 櫛田はオスプレイから井氷鹿を抱えるように降ろすと警備隊員に引き渡し、状況確認のためいったん貴幸たちと別れ、中央作戦司令室に足早に向かった。
 浮遊岩礁は、その後東京湾上空5,000mをゆっくりと北西に進行、その延長線上に横浜市の朝倉辰興の屋敷があり、何らかの関連性が示唆される。横浜市付近への到達時刻は夕刻18:00と予測されていた。
 米軍の2隻の空母はかろうじて沈没は免れたが、戦闘能力および航行能力を完全に喪失、僚艦の救助待ちで三浦半島沖を漂流している。
   蒼龍王は岩礁上で確認されたが、ガメラ、イリス、ジャイガーの消息は不明となっていた。

   井氷鹿は右肩を負傷していたが、深傷ではなく意識ははっきりとしている様子だった。ただ黙って、千里たちを一瞥すると警備隊員に両肩を抱きかかえられ駐屯地の医務室へ連れられていった。
   千里たちは山岸総理に用意してもらっていた地下シェルターへ急ぎ案内された。ほどなく櫛田と医務室で応急手当を受けた井氷鹿が警備隊員に連れられて入ってきた。櫛田がイスに座らせ後ろ手に拘束すると、警備隊員に退去するよう指示して内側から施錠した。密室となった地下シェルターの中には、千里、真弓、悟、貴幸、米森、淺黄、櫛田そして井氷鹿の8人が残った。

 米森は、初対面の櫛田へ挨拶もそこそこに、真弓の指示どおり官邸の齋藤から預かってきた古びたゴルフバッグを貴幸に手渡す。それと井氷鹿から奪った朱霊珠の入ったデイバック。千里は黒霊珠を、貴幸は白霊珠をそれぞれ机の上に置くとゴルフバックからゆっくりと蒼霊珠を取り出した。
 ついに悠久のときを重ね、四神を封印していた四魂の霊珠が集結した。
 
   霊珠はニュートリノシャワーの影響か、お互いに干渉するように規則正しく明滅を繰り返している。井氷鹿もただじっと唇を噛みしめ4つの珠の光を見つめていた。

   続いて千里がゴルフバックの奥から分厚く布で巻かれた棒上の物体を取り出す。注意深く布を開くと、中から柳星張の社にあった十束の剣の柄、石上神宮で授かった剣の断片、そして諏訪大社ミシャクジ神の剣の刃先が現れた。それを順に並べるとちょうど十束の長さの剣となる。この剣の存在にはさすがの井氷鹿も驚きを隠せなかった。
 

「さてさてこれからが問題だわ。この剣を復活できるのはあなたの中で眠っている緋巫女しかいない」
 千里はそう言いながら淺黄に視線を向けた。
「えっ…でも…私の中にそんなもうひとりの人格がいるなんて理解できないし、剣を復活させるにもどうやったらいいのか判らない…」
淺黄は、戸惑いながら千里に訴えた。
「そんなことしたって無駄よ。もうその女の中の緋巫女はもう目覚めない」
井氷鹿は、肩で息をしながら苦しそうにつぶやいた。

「案外そうじゃないかもよ。緋巫女は最高の巫(かんなぎ)、淺黄さんは理解できなくて当然だけど、緋巫女はすべてを知っているし、淺黄さんと一体になっている。ようは眠ってる緋巫女を起こせばいいのよ」
 千里はさらっと言ってのけた。
「ごめんなさい。おまたせ入ってきて!」
 千里が声を掛けるとドアが静かに開き、神職の白装束を身にまとったふたりの男女が入ってきた。それは守部龍成と妹の美雪だった。
「齋藤さんにお願いして、奈良に自衛隊のヘリを飛ばして来てもらってたの。ふたりにはご迷惑かけるけど、これは守部の血族しかできないことだからそこんとこよろしく」
  千里はまた軽い口調で微笑んだ。しかし眼は決して笑ってはいない。
  いつものことだが、千里の洞察力と行動力に真弓はただ驚くしかなかった。

「前にも話したかどうか忘れちゃったけど、守部家は大和國葛城一言主神社に仕えたト部正親の末裔であり、古代より祭祀を司る神祇官として亀甲を用い吉凶を占う品部の氏族だった。柳星張の社は葛城神社の分霊社。つまり守部家は守部文書に従い、代々地祇である土蜘蛛を封印してきた家系なのよ。つまり土蜘蛛の造反者、緋巫女の末裔である可能性が強い」
「せっかくだが私にも、なにをどうしたらいいのか分からないんだけど…」
龍成は自信なさそうに、小声でつぶやいた。
「私の言うとおりにやってくれたら大丈夫。大事なのは守部一族のDNAだから」

 男たちは千里の指示に従い、あらかじめ用意されていた材料を使って市ヶ谷の地下シェルターにはおよそ似つかわしくない古代神道の祭壇を組上げた。エアコンデショナーの微風で無数の蝋燭の炎ががゆらゆらと揺れている。

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  祭壇の正面には、巫女の白衣に着替えた淺黄が立っている。その両脇に守部兄妹。
「さあ、再生の儀式を始めるわよ」
 千里のめずらしく真剣な声が地下シェルターに静かに響いた… 

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いよいよクライマックスの雰囲気になってきましたよ~
ついに守部文書の謎が明かされるときがきました

そしてガメラ、イリス、ジャイガー、シアンキングの最後の闘いが始まりマッス
驚天動地の展開に乞うご期待