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Chapter54 『御霊移し』
 祭壇の中央奥に3つに砕けた剣の断片、その手前に蒼、白、朱、黒4つの亀甲を象った四魂霊珠…

「龍成さん、例のものを出してくれる?」
 千里の問いかけに龍成は無言でうなずき、美雪から受け取った古い木箱の中から朽ちかけた褐色の羊皮紙に記された文献を取り出した。
「こ、これは?」
 不思議そうにながめる男たちに千里が口を開く。
「これが、すべての根源、守部文書の核心部分よ」
「 守部文書は4編56巻、大半は、神世の成り立ちと司祭書のようなものなんだけど、その中でこの一巻だけがまったく異質で解読できない。おそらく現世に神を降ろす秘法だと思う。もし淺黄さんが緋巫女だったら、これを使って四魂霊珠の封印を開放することができるはず…」

 千里が羊皮紙を手渡すと、淺黄の表情が突然なにかに憑かれたように豹変した。眼が妖しく輝き全身が小刻みに震える。やがて淺黄はトランス状態のまま、両手で印を組むと、不思議な言霊を唱えはじめた。
 龍成と美雪は淺黄の両肩を支えるように両手を当てる。

天磐門に神留り坐す 皇神等鋳顕給ふ 
四種瑞津の宝を以て 
天日豊本葦牙皇主身光大神に
授給事誨て曰 
汝此瑞津宝を以て 中津国に天降り 
蒼生を鎮納よ  
蒼生及萬物の病疾辭阿羅婆 神宝を以て 
御倉磐に鎮置て 魂魄鎮祭を為て 
瑞津宝を布留部其の神祝の詞に曰 
蒼龍王 魁白帝 劉朱鶏 黒霊亀
布都御魂由良由良如此祈所為婆 
死共更に蘇生なんと誨へ給ふ 
天神御祖御詔を稟給て 
天磐舟に乗りて 
天元根国河上の哮峯に天降座して 
天越根国排尾の山の麓 
白庭の高庭に遷座て 鎮斎奉り給ふ 
號て石神大神と申奉り 代代神宝を以て 
萬物の為に布都御魂神の神辭を以て
司と為し給ふ故に布留御魂神と尊敬奉 
皇子大連大臣其神武を以て 
斎に仕奉給ふ守部の神社 
天下萬物聚類化出大元の神宝は 
所謂瀛都鏡邊都邊十握生剣 
生珠死反珠足珠道反珠 
蛇比禮蜂禮品品物比禮 
更に四戦神 
蒼龍王 魁白帝 劉朱鶏 黒霊亀
布都御魂由良由良加之奉る事の由縁を以て 
常磐堅磐に護り給ひ幸し給ひ 
加持奉る
神通神妙神力加持……

 祭壇に並べられた4つの霊珠が、淺黄の唱える言霊に呼応するようにカタカタと震え始めた。亀甲紋から漏れる妖しい光の明滅がだんだん強くなる。振動はますます大きくなり、やがて4つの霊珠とも亀甲紋にそって亀裂が入り、外殻が崩れるように砕けると、中から形も色も異なる4つの勾玉が現れた。その勾玉から4色の光の玉が放たれる。それはまるで命を宿しているかのようにゆらゆらと空中を漂いながら上段に奉られた3つの剣の断片に結集した。そのとたんまるで太陽を直視したような、目映い光がシェルター内に満ちる。千里たちは全員祭壇から眼を背けた。

   淺黄がゆっくりと柄を掴み、天井に向かって掲げる。朽ちた3片の剣は一体となり、光の束となって輝いている。やがて光がゆっくりと鎮まると淺黄は崩れるようにその場で気を失った。龍成と美雪が淺黄の身体を支える。手に持った剣は鈍く七色に輝いていた。
   奇跡は起こった。ついに伝説の十束の剣、天羽々斬が現世に蘇ったのだ。

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ちょっぴりファンタジームードになってしまいましたが
ついに千里たちは究極の最終兵器を手にしました
これで、天叢雲(朝倉辰興)の野望を打ち砕け

ちなみに、文献は「竹内文書」の写し
呪文はポピュラーな祝詞を拝借、アバウトにアレンジしました
あくまで雰囲気で深い意味はありません
神様のバチがあたるかも~ダハハ

ついに最終決戦の時は来た 次回に乞うご期待