イメージ 1

Chapter60 『ギンヌンガガップ』
「首都防衛群第3偵察隊より報告。横浜市いぶき野上空に静止していた巨大浮遊岩塊は23:50現在西北西に向かって微速で移動を開始。繰り返します。目標西北西に向かって移動を開始!」
 危機管理センターに再び緊張が走る。
 しかし超電磁波の影響で、電子機器が使用できず半径5km以内に近づくことさえままならないため、ほとんど状況がつかめず、棚橋大臣の悲鳴にも似たエキセントリックな怒号がただむなしくセンター内に響くだけであった。

「気象庁より緊急通報。糸魚川静岡構造線活断層群において巨大地震発生の兆候あり。 とくに牛伏寺断層、岡谷断層群、諏訪湖南岸断層の活動が急激に活発化しており、長野県中部地域においてM6から7の直下型地震が発生する確率が極めて高いため、岡谷市、塩尻市、諏訪市、下諏訪町、辰野町、松本市東部、茅野市西部および安曇野市南部に緊急避難命令が発令されました」

「海自偵察ヘリいぬわしより報告。岩塊中央部に巨大生物の存在を確認。形状から目標は蒼龍王と思われ、岩塊中央の人口構造物を攻撃している模様…」
「いぬわしより再度報告!岩塊上空にGⅢ飛来!蒼龍王と戦闘を開始!繰り返します
ガメラ、蒼龍王と戦闘を開始!」

 ガメラは蒼龍王の上空を大きく時計回りに旋回すると、ネオニュートロンを帯びた紫色に輝くプラズマ火球を立て続けに数発発射した。しかし蒼龍王もハドロンビームを放射、すべての火球は空中で大爆発を起こす。その爆風でコントロールを失ったガメラは磐舟の突端に激突した。
   蒼龍王は爆風に怯むことなく、倒れたガメラに覆い被さるように突進する。尾の先端にある鋭いトゲでガメラを貫こうと後ろ向きになった瞬間、ガメラが俊敏に身を起こすと、蒼龍王の背後から左肩口に食らいついた。鋭い牙がアーマー状の表皮に深く突き刺ささる。暗褐色の体液がガメラの頭部を禍々しい色に染める。ガメラが牙を突き立てたまま首を大きく振りきるとあたり一面おびただしい体液と肉片が飛び散った。

   千里と真弓はシャワーのように降り注ぐ蒼龍王の体液に染まりながら、葬祭殿の奥にある地下への階段にたどり着いた。不安定に揺れる磐舟の挙動に何度もよろめきながら階段を手探りで降りてゆく。葬祭殿の中心部に近づくほど千里の持った天羽々斬の光が輝度を増していく。空気の密度で磐舟の高度が徐々に下降しているのが判る。

「01:10浮遊岩塊現在山梨県甲武信ヶ岳付近にあり。徐々に高度を下げながら北西に毎時15kmで飛行継続中、このまま降下を続けると02:00頃長野県諏訪湖付近に落下の公算大」
「岩塊接近に伴い、糸魚川静岡構造線活断層群のひずみが徐々に大きくなっている旨、気象庁より報告あり。付近住民の避難誘導を迅速に行うよう関係各方面に通達」

 諏訪湖周辺では、夜半から山々の不気味な鳴動が反復し、諏訪湖の湖底中央部ではオレンジ色の光が肉眼でも確認できるほど鮮明に明滅している。
   高台に避難する住民の喧噪が闇につつまれた湖畔の町全域を包んでいる。
 避難命令を告げる官庁の広報車のアナウンスがあたりをいっそう騒々しくしていた。

 上空には雲一つなく、青白い満月に並んで超新星の赤紅色の光が不気味に輝き湖面にゆらゆらと二つの対照的な光跡を落としている。
 東南の空には漆黒の巨大な円盤状の磐舟が地平線を覆うように浮かび、その影がだんだん諏訪湖を飲み込むように迫ってくる。そしてその上方から2頭の巨獣が闘争を続ける壮絶な彷徨が風に乗ってかすかに耳に届く。それが避難する人々の不安と恐怖心をますます増幅させている。

   湖底の光は、磐舟が接近するにつれ湖面中央から南北に伸びる断層に沿ってしだいに帯状に拡大し、裂け目から立ち上るオレンジ色の光の壁も徐々に高さを増していく。地面がびりびりと小刻みに振動しているのが足下から伝わってくる。
 
   ただひとり、官邸の危機管理センターに帰還した米森は、モニターに映されたこの世の出来事とはとても思えない光景を凝視しながら、以前真弓から夢枕に聞かされた世界創造の遙か以前に存在していた地の果ての巨大で空虚な裂け目ギンヌンガガップの伝説を思い出していた。 

 ギンヌンガガップの北からはニヴルヘイムの激しい寒気が、南からはムスペルヘイムの耐え難い熱気が吹きつけている。世界の始まりの時において、寒気と熱気がギンヌンガガップで衝突した。熱気が霜に当たると、霜から垂れた滴が毒気となり、その毒気はユミルという巨人に変じた。ユミルは全ての霜の巨人たちの父となり、またのちに殺され彼の肉体によって世界が形作られることとなる。滴からは牝牛のアウズンブラも生まれ、ユミルはアウズンブラから流れ出る乳を飲んで生き延びた。アウズンブラは氷をなめ、そのなめた部分からブーリが生まれた。北欧神話の主神であるオーディンはブーリの孫にあたる。のちにオーディンらによってユミルが殺されたときに、ギンヌンガガップはユミルの血で満たされたという…

 突然危機管理センター内にけたたましく緊急ブザーが鳴り響く。
「中国外務省より緊急通信、中国政府は自国および世界秩序の脅威となる事象を完全排除するため、国連安全保障理事会へ通告し、まことに遺憾ながら、やむおえず明朝08:00をもって貴国領土内に存在する巨大物体に向け弾道ミサイルによる熱核攻撃を実施することとした。貴国政府はすみやかに国民の生命と財産の安全を確保されたい。繰り返す明朝08:00、我が国は貴国に対し熱核攻撃を実施する」

 危機管理センターの空気が一瞬のうちに凍りつき、いままでに経験したことのない戦慄と恐怖がその場にいる全員の身体を硬直させ、センター内を重圧で押しつぶすように沈黙が拡がっていく。米森は冷たい汗が一筋額を流れ落ちるのを感じた。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

ここにきて中二病オヤジの妄想全開デッス
もうなんでもありのカオス状態…
でもなんかクライマックスの雰囲気出てきたでしょ~
それではイメージを盛り上げるため
大好きなTHERION[Ginnungagap]を聴いてみませゥ