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すっかりはまっちゃった“人食い人魚”シリーズ
日本代表は映画じゃなくて諸星大二郎さんのコミック「悪魚の海」デッス

小島渚は夜の海岸で,海女の修行をしているはずの中学時代の友人・後藤カオリと出会う。カオリは海女の修行がつらくて逃げ出していたのだが,海から呼ぶ不思議な声を聞くと,戻って行ってしまう。心配した渚は,ボーイフレンドの大島潮とともに,カオリが暮らしているはずの集落へ出かけるが,そこはひどく排他的で追い払われてしまう。渚たちは,知り合ったジャーナリストと共に,夜の闇に乗じて海女小屋を目指す。そこで彼らが見たものとは?

妖怪ハンターシリーズのスピンオフコミック“稗田の生徒たち(1)”で「夢見村にて」とカップリングされてる作品で、オリジナルは「ウルトラジャンプ」2010年12月号から2011年3月号まで連載されていたそうです。諸星大二郎さんの作品としては比較的新しいものですね
メインキャラの大島潮と小島渚は「うつぼ舟の女」「それは時には少女となりて」
「六福神」といった海洋もの奇談にたびたび登場するおなじみのキャラクターデッス
ただし、この二人のエピソードに“妖怪ハンター”の主人公稗田礼次郎教授が登場することはまれですゥ~

この物語に登場する悪魚は、当然日本の妖怪のひとつで、美しい女性とは無縁の姿をしています。古い文献だとこんな感じで記録されてます

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それがこのコミックではこんな御姿…

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ただ、この悪魚が操る海女(人魚)は若い女性が変身したもので、西洋の人魚のような姿をしていますが、姿とはうらはらに人を喰らいます
なんかイメージ的にはラヴクラフトの「インスマウスの影」に似てるように思います

タイトルの悪魚は、記紀神話では別名「悪樓(あくる)」とも呼ばれる瀬戸内に棲息する巨大魚で、日本武尊が熊襲討伐後の帰り道に遭遇し、暴れ狂う悪樓の背にまたがるや自慢の剣(天叢雲剣?)で退治したという伝説が残っているそうです~

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「悪魚の海」では正体不明のまま”人食い人魚”たちを連れて夜の海へ去って行きます

もうひとつ「人魚の記憶」という短編に人食い人魚が…「それは時には少女となりて」でも海魔の少女が登場します。どちらも「悪魚の海」と関連してるお話かもしれませんね。そうそう「私家版魚類図譜」にも深海の人魚が登場しました

諸星さんの海洋ものには、妖しい人魚やグロテスクな怪物が大挙登場して、神話ベースの伝奇ものとはまた違った趣があります
そんな数多くのエピソードの中で、私が最も好きなお話は「海竜祭の夜」かなぁ~
まるで、琵琶法師の平家物語が聞こえてきそうな気分になりますヨン
ただし人魚は登場しませんけど…ダハハ

「悪樓」に関する興味深い論文を見つけたので読んでみてね