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Chapter64 『アーマゲドン』
 諏訪湖南岸に上陸した蒼龍王は、なにか目的でもあるかのように諏訪大社本宮の方向にゆっくりと移動を開始した。蒼龍王の眼は、緋巫女たちに天磐門の開放を阻止された怒りからか燃えるような真っ赤に変色している。

 蒼龍王の頭上を大きく旋回していたガメラが行く手を阻むように、蒼龍王のほぼ正面に立ちはだかると、すぐさまネオニュートロンをおびたプラズマ火球を数発放った。しかし蒼龍王もハドロンビームで応戦、再び発生したすさまじい衝撃波で近隣の構造物のほとんどが跡形もなく粉砕され、蒼龍王も大きくバランスを崩す。ガメラも後方へはじき飛ばされた。上空至近距離から状況を観察していた陸自の偵察ヘリも猛烈な爆風でコントロール不能となり失速、上川大橋の橋桁に激突、大きな炎が立ち上った。

   体制を立て直そうとした蒼龍王の背後から、音もなく飛来した劉朱鶏イリスの触手が蒼龍王の身体にからみつく。四本の触手に締め付けられ、さすが蒼龍王も身動きがとれない。しかし左腕にからんだ触手を強引に引き剥がし、鋭い牙で噛みちぎった。ちぎれた触手の先端から赤褐色の体液が噴水のように噴き出す。
 イリスは、残された3本のテンタクランサーを蒼龍王の堅固な表皮に突き立て徐々に切り剥がしていく。イリスの体温は吸収した核エネルギーの影響で急激に上昇し、臨界点に達するほど異常高温となっていた。すでに体の一部が溶解し、全身から水蒸気が立ち上っている。メルトダウン寸前なのは、明らかだったが、それでもなお攻撃の手を緩めようとはしない。蒼龍王もひるむことなく、イリスが絡みついたままじりじりと諏訪本宮へ近づいていく。

 本宮には出石姫の側近守矢轍齋が守る蛇神ソソウ神の祠がある。同時刻、轍齋は一心不乱にソソウ神の神像の前で加持祈祷を続けていた。
同化した朝倉達興の精神が蒼龍王を動かしているとすれば、轍齋は超自然の力を駆使して土蜘蛛の怨念を封じようとしているのかもしれない。
轍齋は突然意を決したかのようにソソウ神の神像を祭壇の神剣でまっぷたつに切り裂くと、体内に安置されていた神獣鏡を取り出し、天上に輝くベテルギウスの方向に両手で高くかざした。

 ガメラはゆっくりと立ち上がると蒼龍王に向かって突進し、正面から組み伏せようとする。ガメラの甲羅の中央にはGⅡのときと同じく、灼熱を帯びて赤く輝く何かシンボルのような紋様が鮮明に浮かび上がり、自爆の予兆を顕著に表していた。

   長く鋭い蒼龍王の尾のかぎ爪がイリスの背後を貫き、そのまま強引に引き離そうとする。しかしイリスの残った3本の触手は蒼龍王の首と左右の腕にしっかりと食い込み容易に離すことができない。イリスの発する高温で、密着した蒼龍王の全身からも水蒸気が立ち上り徐々に装甲が犯されていく。
 一方ガメラは蒼龍王の胸部にある三日月状の角の先端を右腕で掴み引き寄せると、左肘にある鋭いエルボークローで切り裂き、開いた傷口を左腕で深くえぐる。強靱な蒼龍王もダメージのため幾分動きが鈍ったように見えたが、まだ侵攻は止まらない。ガメラとイリスを引きずったまま上川沿いにじりじりと南下を続け、中央自動車道を分断、諏訪大社本宮の目前に迫っていた。

   千里、真弓、貴幸の3人は肉眼で状況を把握するため、陸自の装甲機動車で、中央道諏訪IC付近の闘争地点へ向かっていた。
「今何時?」
千里が運転している貴幸に聞いた。
「8時02分、限界点まであと16分」
「緋巫女と出石は誰よりもこの状況を理解し、何をすべきかが判っている。ということはガメラとイリスも…だからきっと彼らは現世を救い、蒼龍王を葬ってくれる。私たちにはもう見届けることしかできないけど、2人の意思と現世の守護神の力を信じるわ」

 蒼龍王の爪がガメラののど元に突き刺さる。そしてふところへ引き寄せると胸の三日月状の角がガメラの腹部へゆっくりとめり込み、おびただしい量の緑色の鮮血がボタボタと足下を染めていく。蒼龍王の体内から、無数の黒い群体生物がガメラの傷口から体内へ侵入しようと這い上がってくる。しかしガメラの体温があまりにも高温なため、体内に入り込もうとする前に次々と蒸発し消滅ていく。

 蒼龍王はガメラの頭部へ向けてハドロンビームを打ち込もうと大きく口を開ける。そのときイリスのテンタクランサーがまるでそれを阻止するかのように背後から蒼龍王の上顎を貫通する。しかし蒼龍王は少しもひるまず、それを粉々に噛み砕いた。       
 その隙にガメラは右腕で蒼龍王の下顎の突起物をつかむと力まかせに引きちぎる。蒼龍王は大きく咆吼し放ったハドロンビームがガメラの頭部をかすめ、ソソウ神の祠を直撃した。
すると祠の方向から何者かの未知なる力によって撃ち返された光束が蒼龍王の顔面を直撃する。自ら放った殺人光線の威力で蒼龍王の頭部の右半分が粉々に砕け散った。さすがの蒼龍王もガクンとガメラにもたれ掛かる。
千里たちの眼前で繰り広げられている凄惨な三つどもえの戦神の闘いはただ本能のまま、果てしなく続くかのように思われた。

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 諏訪湖上空では巨大な球状のワームホール“天磐門”がまるで意思を持つかのようにゆっくりと回転しながら成長を続けている。日の出の時刻はとっくに過ぎていたが天磐門の周辺は厚い灰色の雷雲が渦巻き、太陽の光はまったく遮られて地上に届かない。しかしなぜか超新星のオレンジ色の光は、磐舟から天磐門に向かって放たれているニュートリノの光束と混ざり合い、ワームホールの中心部に吸い込まれ、まるで天磐門に強大なエネルギーを供給しているかのように思えた。

  やがて天磐門の光が一段と強くなるにしたがい、空気の流れが天磐門中心部に向かって大きな渦巻となって、諏訪湖周辺の木々や工作物を徐々に吸い上げはじめた。湖面にも幾筋もの竜巻が発生する。千里たちも強烈な突風に危険を察知し、高速道路の堅牢な構造物の影へ避難した。乗ってきた装甲機動車が竜巻のひとつに飲みこまれてはるか上空へ消えていった。いよいよ限界点が近づいている。
「時間は?あと何分だ」
「限界点まで2分20秒!」
貴幸の問いに大きな声で千里が叫ぶ。
「もう時間がないわ!」

千里の悲痛な叫びが通じたかのように、ガメラが蒼龍王の首元に向かって至近距離からプラズマ火球を放った。火球は蒼龍王の下顎部を貫通する。さすがの蒼龍王もかなりなダメージを受け、そのまま崩れ落ちるようにガメラに覆い被さる。ガメラは蒼龍王に両腕の爪を突き立てると、腹部に角が刺さったまま、後脚からジェット噴射を開始した。ガメラの全身は溶鉱炉の溶鉄のように真っ赤に輝いている。
 同じくメルトダウン寸前のイリスも水蒸気に包まれながら、溶解寸前の残った触手を翼状に大きく拡げる。3体の巨獣はひとつの赤い塊となって地上からゆっくりと浮き上がった。そして天磐門の中心部へと姿を消していく。磐舟もまた諏訪湖から離水し、ゆっくりと天磐門に向かって上昇している。磐舟端部は大きく崩れ、すでに半分以下の大きさに収縮していた。

 そのとき千里たちの頭上を、駿河湾に展開中の米駆逐艦ズムウォルトが放った3基のトマホークが、甲高い飛行音を残して亜音速でかすめていく。核ミサイルは3頭の神獣を追って吸い込まれるように天磐門の中心部へ消えていった。

 3頭の神獣と3基の核ミサイルが天磐門に吸い込まれて数秒後、地表のものすべてがいままでに経験したことのない、朱く輝く強烈な光と磁気嵐に包まれた。激しい光の洪水に飲み込まれ、かろうじて原型をとどめていた磐舟の中央部も、膨大な光のかけらとなって分解し、ワームホールに吸収されていく。

   やがて、天磐門は急激に縮小を始め。周りの雷雲や竜巻を飲み込みながら、数分のちにはいままでの事象がまるで実態のない悪夢だったかのように、存在していた痕跡も残さず完全に消滅していた。
そこには天磐舟の姿もどこにもなく、数十カ所に渡って発生していた断層の裂け目からももうあの不吉な光の柱は立ち上っていない。地震活動も急速に沈静化していった。
 激しく流れていく雲の間から差し込む初冬の柔らかい朝日が、諏訪湖の湖面にきらきらと輝いている。
 
中央道の高架橋の上から3人は無言で諏訪湖を眺めていた。破壊しつくされた諏訪市中心部の惨状はあの出来事が紛れもない現実だったことを物語っている。
首都圏を含め復興には長い年月がかかることだろう。でもそこには希望がある。
   やがて磁気嵐も収まり通信も復旧した。貴幸の持ったトランシーバーから米森と悟が代わる代わる3人に呼びかける声が飛び込んできた。後ろで相変わらず棚橋大臣がなにやら大声でけたたましく叫んでいるのが聞こえる。
   千里と真弓は顔を見合わせ、心の底から安堵の笑みがこみ上げてきた。
貴幸はポケットからよれよれのタバコを取り出すと、ゆっくりと火をつける
 「また現世に災いが起こったら、きっとまたガメラが助けにきてくれるでしょうね」
 「そんなこともう2度とごめんだけどねェ」
  千里は貴幸のくわえているタバコを横取りし水たまりにポイと捨てると、両手を拡げ急速に拡がっていく青空といっしょに運ばれてきた新鮮な空気を胸一杯深く吸い込んだ。

エンドロール

夕刻、行方不明者の捜索をしていた長野県警の機動隊員が諏訪湖畔で意識を失って倒れている一人の女性を発見し救助した。女性の名は草薙浅黄、津波にのまれたと思われるが不思議なことにかすり傷ひとつおってはいなかった。
      

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 あとがき
2011年10月から書き始めて足かけ7年、2次創作妄想怪獣小説「ガメラ4」やっとこさ完結することができました。長い間お付き合いいただきどうもありがとうございました。
 小学2年生のとき「キングコング対ゴジラ」を映画館で観てから半世紀以上ずっと私なりの理想の怪獣映画を追い求めてきました。その答えに近い作品が、金子監督の平成ガメラ3部作でした。あの3作品には私が特撮怪獣映画に求める欲求のほとんどが満たされていました。
 ただ続編を暗示するかのような「ガメラ3邪神覚醒」のエンディングから、物語がいったいどう展開していったのか知りたくてしょうがありませんでした。林家しん平監督の「駕瞑羅4 真実」は私の田舎では観ることがかないませんでしたし、のちの「小さき勇者たち」は残念ながらかなり求めているものとは異なった作風の作品でした。

 そんなこんなで7年前に拙ブログで思いつくまま続編のプロットのようなものを書き始めました。そのきっかけはハニーボーンズ前田さんの創作怪獣「シアンキング」の存在です。もともとは丸山浩氏デザインのオリジナルキャラですが、そのリアルなかっこよさにほれぼれしました。この怪獣が敵キャラとして登場するガメラの続編をぜひ観てみたいと思いました。

書きながら次の展開を考えていたような状態で、文章の表現力やボキャブラリー不足もはなはだしく、整合性もとれていないとても小説などとは呼べない稚拙な文章ですが、なんとか結末までたどりつくことができたように思います。

 ただ、これはあくまでこんな怪獣映画(ガメラ作品)が観たいな~という私の個人的な願望です。ファンの方それぞれ「ガメラ」という怪獣映画に対する思い入れの尺度やアングルが違うと思いますから、あくまでファンのひとりである私の妄想にすぎません。既存の作品、資料等から自分好みのパーツを集めて再度組み立てただけの2次創作の作文です。
 もし我慢強く最後まで読んでいただいた方がいらっしゃいましたら感想・ご意見などお聞かせいただけたら嬉しいです。

 7年の長きにわたりお付き合いいただきほんとうにありがとうございました。
次回は「ゴジラ」作品とか妄想してみたいかも~ダハハ                      

インスピレーションやアイデアを頂いた映像作品・参考文献・ウェブサイト等…
「ガメラ・大怪獣空中戦」
「ガメラ2・レギオン襲来」
「ガメラ3・邪神覚醒」
「ガメラ・小さき勇者たち」
「ガメラ対大魔獣ジャイガー」
「ゴジラVSデストロイア」
「ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」
「GODZILLA 2014」
「フリンジ」
「インターステラー」
「パシフィック・リム」
「マイティ・ソー/ダークワールド」
「ファイナルカウントダウン」
ウルトラQ「虹の卵」「ガラダマ」「鳥を見た」「ゴメスを倒せ!」
「ミラーマン・リフレックス」
「新世紀エヴァンゲリオン」
「超時空要塞マクロス」
「古事記・日本書紀・日本霊異記」
佐治芳彦「謎の竹内文書」
諸星大二郎「暗黒神話」「天孫降臨」
高橋克彦 「竜の柩」
H.P.ラヴクラフト「クトゥルフの呼び声」「ダゴン」「狂気の山脈にて」
「闇を彷徨うもの」「宮殿」
高橋御山人「邪神大神宮」
「Wikipedia」