しばし休題…
先日アマプラで鈴木亮平さんと有村架純さん主演の映画「花まんま」を観ました。原作が短編なので、ずいぶん脚色されてはいましたが、心が優しくなるいい作品でした。
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原作は2005年に発刊された朱川湊人さんの小説で、第133回直木賞を受賞した「花まんま」です。内容は6編の不思議なお話を集めた短編集で、映画化されたのはこの表題作ですね。
キャッチコピーは「大人になったあなたは、何かを忘れてしまっていませんか?」

この短編集については、以前にも一度話題にしたことがありましたが、その6編の中で一番心に残ったのは「トカビの夜」というお話でした。

トカビ(トッケビ)は朝鮮半島に伝わる妖怪…ユキオは在日朝鮮人の少年チュンホと親しくなるが、チュンホは生まれつき病弱で、仲良くなったのもつかの間、病気が悪化して突然死んでしまう。その後、近所の家にチュンホの幽霊(トカビ)が頻繁に出るようになる。住民たちは朝鮮人を差別していた祟りだと慌て、ユキオも友だちに感化され、チュンホに意地悪なことをしていた自分を悔やむが……

お話の舞台は昭和42,3年頃の大阪の下町…当時の小学生の男子のほとんどが怪獣に夢中になっていた時代です。東京から長屋の文化住宅に引っ越してきたユキオは一人っ子で甘やかされ、たくさんの怪獣のおもちゃや本を持っていて、近所の子供たちに一目置かれる存在でした。
そんなユキオのところへ、近所に住む在日朝鮮人の母親が病弱な息子チュンホに怪獣の本を見せてあげてほしいと頼みにやってきます。チュンホの兄チュンジは近所のガキ大将なので、無下に断ることもできず、チュンホの家に怪獣図鑑や絵本を持って渋々遊びに行くことになります。
でも歳が一つ下で怪獣好きの人懐っこいチュンホと共通の話題ですぐに仲良くなるんですが、チュンホは翌年の8月にあっけなく病状が悪化し一生を終えてしまいます。
ユキオは近所の子供たちに触発されて、心とは裏腹にチュンホをいじめたことを後悔します。そんな矢先近所ではチュンホが夜な夜な幽霊になって現れるといううわさ話が持ち上がります。
そしてある夜、ユキオはチュンホが楽しそうに夜の屋根の上を飛び回っている姿を目撃します。その姿を見てユキオはチュンホが悲しいのではなく、トカビになって自由になれたのがうれしくて夢中になって飛び回っているのだと気づくのでした……
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お話の中で、ユキオとチュンホが「怪獣総進撃」に登場する怪獣たちのことを楽しく話していたり、チュンホの母親がおやつにパルナスのお菓子を買ってくる場面があります…たらいに浮かべた船のプラモ、ラジコンの戦車…みんな当時の自分の姿と重なってめっちゃ懐かしくなりました。

確かにストーリーの中に当時の在日朝鮮人に対する差別意識といった重いテーマが描かれてはいるのですが、それにも増して昭和40年代…自分たちが小学生の頃の懐かしい風景が思い出されて、読むたび胸がキュンと締め付けられます。

めっちゃ短い短編小説なんですが心に残るお話で、さすが直木賞を受賞したのも理解できます。
このお話はドラマにはなってませんが、表題作の「花まんま」は映画として配信されてるので、ぜひご覧になってみてくださいませ~面白いし、きっと心がホッコリすると思いますゥ~